坊主頭が似合う男性について語ります。
○玄界灘の島 (昼)
慧と定児は島に着く。辺りは霧で覆われていて、遠くは見えない。少し離れたところに大柄で古代インドの帝王の服装をした大魔王波旬がいる。
波旬「よく来たな。だが余の勝利は目前だ」
定児「お前の思うとおりにはさせん。人類からこれ以上エネルギーを吸い取らすわけにはいかない」
波旬「愚かなり。余の親心がわからぬか。今の人類の文明がこのまま続けばどうなる。地球の環境はますます悪化し、やがて人類は滅亡する。そうならないように、人類全体を休ませようとしているのだ」
定児「休ませるだと。有無を言わさず眠らせているだけじゃないか」
波旬「人類の暴走を止めるにはこうするほかない。それに誰も苦しんではおらん」
慧「もっとほかに方法があるのでは。人類も自分の過ちに気付いています」
波旬「身勝手で未熟な人類に自らを制御する能力は乏しい」
定児「これ以上話しても無駄なようだな。力ずくでも止めてみせる」
波旬「やはり最後は暴力に訴えるか。物質界の支配者である余に勝てるかな」
定児「勝つ!」と言って、刀を構える。
慧「待ってください。僕は暴力を使いたくありません。僕にできることであれば何でもやりますから、眠っている人たちを目覚めさせてください」
波旬「ならば言おう。汝の命を余に差し出せ。全人類のために犠牲になる覚悟はあるか。まあ、利己的な人間にはできまいが」
少し間を置いて、慧は答える。
慧「わかりました。僕の命を差し上げます」
波旬「よろしい。汝の命をもらおう」
波旬が左手から光線を発射する。光線は慧のほうに伸びる。すると、定児が素早く移動して慧の前に立つ。定児が電撃を受けて倒れる。慧は定児に駆け寄り、定児の上半身を抱き起こす。
慧「定児さん」
定児は無言のまま目を閉じ、事切れる。慧は恐れていたことが現実になり、ぼうぜんとなる。
波旬「(高笑いして)闇よ、陽のシンボルである福岡タワーと陰のシンボルであるヤフードームを破壊せよ。タワーとドームがなくなれば、余を妨げるものは何もない」
(次回が最終回です)
○寺院の境内
慧と定児は二人だけで話している。
定児「どうしたんだ?」
慧「定児さんのことが心配なんです」
定児「今まで何度もピンチを切り抜けてきたじゃないか」
慧「大魔王は違います。命を失うかもしれませんよ」
定児「男なら命をかけなければならないことがある。今がそのときだ」
慧「(涙目で強い口調で)定児さんを失いとうなかっ!」
定児は右手を慧の左肩に置いて静かに言う。
定児「俺たちがやらなきゃ誰がやる」
定児は一人でその場を去ろうとする。
慧「待ってください。一人では行かせません」
定児「わかってくれたか」
慧「定児さんと一緒にいたい。ただそれだけです」
定児は微笑して、慧の背中に手を回す。二人は横に並んで歩いて、文殊菩薩の前に戻る。
○寺院の屋内
文殊菩薩の前に慧と定児がいる。サンポーは菩薩の脇にいる。
文殊菩薩「慧に渡すものがある」
菩薩は空中から巻物を出現させ、巻物を手に取る。
文殊菩薩「何か困ったときはこの巻物を開くがよい。汝の助けになるはずだ」
慧はうやうやしい態度で菩薩から巻物を受け取る。すると、慧と定児のそばに白い光の門が出現する
文殊菩薩「大魔王波旬は玄界灘に新しくできた島にいる。その光の門を通って行け」
慧と定児は菩薩に一礼すると白い光の中に飛び込む。
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